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2月23日の放送は「すごい社長が再挑戦 がっちり!もう1度社長」
2月23日放送は、有名企業の社長だった人が一度社長を離れ、もう一度社長になった3例を紹介しています。
ゲストは経済評論家の森永卓郎さんと、タレントのヒロミさんです。
すごい社長が再挑戦 がっちり!もう一度社長
- ワタミのカリスマ創業者が古巣に戻り、からあげで脱居酒屋
- おもちゃ会社の元社長がプロレス業界に参戦!
- HIS社長がホテルを手配する側から提供する側へ
ワタミのカリスマ創業者が古巣に戻り、からあげで脱居酒屋
一人目のもう一度社長は、ワタミ株式会社の渡邊美樹会長です。
(名誉職の会長ではなく、実質的な代表であることは今も昔も変わりません。詳細は後述)
渡邊会長は居酒屋「和民」を創業し、東証一部上場企業にまで育てあげた、まさにカリスマ経営者でした。
ここで過去形になっているのは、政治の世界に転身するため一度トップの座を退いたからです。
その後、労務管理問題で「ブラック企業」と大バッシングを受け業績低迷したワタミでしたが、渡邊さん不在の中でもいろいろと改革をし業績は持ち直していきました。
そして2019年に議員の任期を終えた渡邊氏が会長としてワタミに復帰したのです。
渡邊会長は、復職するまでの間も業績回復の作戦を熟考し、その源泉は「読書」だったそうです。
渡邊会長
「経営者に戻ろうと思ってから、今まで読んできた本をもう一回読み直して、ワタミ事業戦略を決めたんですね。(本棚にある本を指して)この20冊を繰り返し読んで、ワタミのこれからの事業戦略を組み立てました」
トップダウンからボトムアップの企業に
会社の雰囲気が大きく変わった点について
渡邊会長
「僕が離れている間にも、トップダウンからボトムアップの企業に生まれ変わったんです。今はこちらからどんどんテーマを与えて、みんなが考えてくれています!」
番組
「ハイブリッドで理想の感じに?」
渡邊会長
「そうですね。理想の形になりつつあると思います。ボトムアップとトップダウンのハイブリットでワタミは生まれ変わるんです」
会社は生まれ変わった!昔と今の会議シーンから
ここで番組は、会議の様子を3つ紹介しています。
1つ目は、16年前の会議
渡邊社長が社員を叱咤するシーン
渡邊会長
「部長は誰だ?ふざけんな!」
名指しされた社員
「すみません」
2つ目は現在の会議
社員の報告に耳を傾ける会長
女性社員
「宅食(食事宅配用)の弁当箱を、トレーに作り直しました」
渡邊会長(微笑みながら)
「いいじゃないですか」
上記のシーンについて
番組
「これが昔なら、どうしていましたか?」
渡邊会長
「この形のトレー作りなさい。そのぐらいのトップダウンでしたね。でも、今はハイブリットですから」
3つ目は、別の会議できびしい発言
有機野菜作りについての会議で、今度は一転してきびしい会長の表情
渡邊会長
「ワタミファームのFacebookページ読んでる?彼らの活動に感動してそこから前に進んでいかない限り広がっていくわけないじゃん!」
単純に、やさしいトップに変わったというわけではないようです。
挽回策は「小さくて強いワタミに戻ろう」
2020年、年始の朝礼シーンで
渡邊会長
「今年のテーマは『小さくて強いワタミに戻ろう』です。今は大きいけれど、弱いワタミになっているんです。小さくて強いワタミにもう一回戻ろうと思います!」
「から揚げの天才」~小さくて強いワタミ実現の新業態
小さくて強いワタミに向けた新業態のコンセプトは「脱居酒屋のフランチャイズ」。
そしてできたのが、その名も「から揚げの天才」
ホームページでは「から揚げの天才~揚げたてから揚げと、テリー伊藤こだわりの玉子焼き」とテリー伊藤さんが前面に出ています。ラジオ番組での共演がきっかけだそうです。
フランチャイズ問い合わせページに遷移すると、ワタミが展開しているとわかります。
メニューはから揚げと玉子焼き(テリー伊藤さんの実家は有名な玉子焼き専門店)だけ。イートインもありますが、メインはテイクアウトなので店舗運営費も抑えられます。
これまでのワタミは、大きな店舗と豊富なメニューを売りにしていましたが、今度はその逆を狙っています。
東京都大田区の梅屋敷1号店は15坪の小さな店舗ですが、一日の売り上げは20万円。
年中無休なので「1日20万円×1ヶ月(30日として)」で月商は360万円、年商なら単純計算で4,300万円を超えます。
ひと坪あたりの年商は280万円以上で、文字どおり「小さくて強い」と言えます。
(売上は、あくまで理想的な数字です)
ワタミのビジネスプランについて
ワタミのビジネスプランは、自社の弱点や欠点を自己分析し、その逆をやっている点で成功していると思います。
これは自社の弱点を分析し、その弱みを強みに変えるという、いわゆる「SWOT分析」の手法です。
※SWOTとは下記4要素の頭文字
組織や個人において外部の環境と内部要因の2部門で、かつそれぞれに4つの要素
①強み (Strengths)、②弱み (Weaknesses)、③機会 (Opportunities)、④脅威 (Threats)で要因分析し、現状分析と打開策を考えていく手法
会長の言葉にあるように、会社を生まれ変わらせるという強いメッセージを感じます。ここがワタミ復活の一因だと思いますが、そのいっぽうで番組内の16年前と今の会議風景を見る限り、やはりこの会社は渡邊氏のカリスマ性ありきだと感じました。
そもそも渡邊氏は創業から今に至るまで実質的にワタミのトップであり、議員時代も影響力は維持していたと思われます。そういった点ではもう一度社長と言っていいのか?疑問に感じる部分はあります。
また番組内で、ブラック企業とバッシングされたことを「ゴタゴタがあって」と苦笑するシーンを見る限り、本当に生まれ変わっているのか?疑問に感じてしまいます。
ワタミでは過酷な労働から社員が自殺したことがあり、こちらは現在も係争中です。
また傘下の介護施設(現在は介護事業から撤退)で、入所者が死亡したときの対応が問題視されたこともありました。たとえ係争中とはいえ人の命が失われたという事実は重要です。
労働環境、社内の雰囲気など課題は残っているでしょうし、将来カリスマ創業者が去った時の反動も心配要素です。
おもちゃ会社の元社長がプロレス業界に参戦!
次に登場したのは欧米人と思われる外国人男性。最初は英語でしたが途中から流暢な日本語で自己紹介を始めました。
この人はオランダ人のハロルド・ジョー・メイさんで、おもちゃ会社タカラトミーの元社長です。
メイさんはアイデアマンで、リカちゃん人形を大人用にアレンジするなど自らの発案で、下降していたタカラトミーの売上を3年で250億円も上昇させました。
そして2018年に社長を退任し、次にまったく違う分野の新日本プロレス社長に就任しました。
プロレスが好きだから世界に広げたい!と社長に就任
畑違いとも言える異業種への転身も、
メイ社長
「8歳の頃からプロレスを見てました。プロレスがすきで世界に広めようと」
メイ社長には自然なことだったようです。
メイ社長が就任後、新日本プロレスの売上げは順調に伸びていき、そして前期は過去最高の売上げ49億円を達成しました。業績を回復したのは、アイデアマンのメイ社長による2つの作戦がありました。
売上アップ2つの作戦
- 作戦1.新日本プロレスを世界に発信
- 作戦2.グッズ開発と。演じることに闘魂注入!
作戦1.新日本プロレスを世界に発信
1つ目の作戦は、新日本プロレスを世界に発信すること。そのため各部署に外国人社員を積極的に採用しています。
たとえば提供する動画配信サービスには、英語字幕をつけて世界に配信しています。
メイ社長の意向で「選手同士の因縁」や「戦いの歴史」など細かいところまでしっかり解説しています。これはマニアにとって堪らないもので、マニアの社長だからこそマニアの気持ちがわかるのです。
メイ社長
「選手の因縁とか抗争の歴史、IWGPのチャンピオンベルトがいかに凄いのか?などを外国に発信しています」
世界への発信の成果としては、エンターテイメントの殿堂であるマディソン・スクエア・ガーデンで試合を開催し、チケットはなんと16分で完売!これはマディソン・スクエア・ガーデンの最短記録だそうです。
新日本プロレスはWWE成功の先駆者
個人的に思い出す選手同士の因縁と言えば長州力の「噛ませ犬」発言とドラゴン藤波との抗争。また、1983年IWGPリーグ戦で優勝した「超人」ハルクホーガン、試合でアントニオ猪木が失神した翌日に学校で「猪木とホーガンどっちが強い?」の話題で友人と本気でケンカになったことなどを思い出しました。
しかし、これは私の思い出話しだけではありません。こうしたリング外のエピソードまで含めてエンターテイメントにする手法は、現在ブームになっているWWE(アメリカのプロレス団体、徹底したショーアップで全世界に発信中。最近日本人では中邑真輔選手が有名)と同じです。
新日本プロレスはWWEより何十年も前からこの戦略を打ち出していたんですね。
作戦2.グッズ開発と、演じることに闘魂注入!
メイ社長自らが、選手グッズを考案しています。
たとえば選手ごとに作ったクマのぬいぐるみ「マネくま」が好評。最新作の「ぴょんすけ」も、社長の命名です。こちらは肩に乗せられるマスコットで早くも人気となっています。
(ひと昔前、私が見ていた頃のプロレスグッズと言えば選手の名前入りスポーツタオルぐらい、ここにも時代の変化を感じます)
また社長自身が選手と同じ「演じる側」に立っています。
番組では「ファンタスティカマニア」というメキシコプロレス風の試合にあわせメキシコ風衣装を着たメイ社長が登場し、ファンと写真撮影をするとのこと。
撮影には行列ができていましたが、それもそのはず社長のファンクラブまであるそうです!
来場客
「社長がプロレス好きで、その気持ちが伝わるので。僕たちも嬉しいです」
また、選手も社長をリスペクトしています。
棚橋選手(新日本プロレスのエース)
「有名企業の元社長さんなので、社会的にもしっかりした会社という印象が加わりましたね。(創業から)47年掛かってようやく一人前の会社になった、そんな印象ですね」
社長の夢は「日本観光の目的がプロレスになる日」
メイ社長は、いつの日か「日本観光の目的がプロレスになる」ことを夢見ています。
メイ社長
「外国人観光客が『プロレスを見なければ日本を体験したとは言えない』というぐらいのところまで持っていきたいです!」
スタジオでの会話
森永さん
「メイ社長は、日本人の心がわかるだけじゃなく海外の視点も持っていて、成田空港の出発ゲート前に「ガチャガチャ」(カプセルおもちゃの販売機)を並べたのはメイ社長なんです。今では全国の空港に並ぶようになりましたよね」
司会の加藤さん
「アイデアマンなんですね!」
新日本プロレスのビジネスプランについて
メイ社長は外国人であることを良いかたちで自分の強みとし、会社の強みにもしているところです。
たとえば社長自らコスプレしてファンサービスする、これを日本人社長がやってもうまくいったかは疑問です。ご自身が好きだからというのもあるでしょうが、外国人の自分が演じたときのサプライズ効果を自分自身でわかっていたからでしょう。
そして純粋な「プロレス愛」が会社への愛にもつながり、日本人社員や選手からもリスペクトされる良い状況を生んでいるのだと思います。
この点は番組の最後、ゲストのヒロミさんも
ヒロミさん
「経営もできて、愛もあるってなるとかなわないよね」
と成功した理由を納得しています。
HIS社長がホテルを手配する側から提供する側へ
最後に登場したのは、株式会社JHATの平林朗社長です。
平林社長は大手旅行代理店「H.I.S」の元社長で、当時40歳の若さで社長に就任し、50歳で社長を退任するまで経営を担ってきました。
そして2年前、新しい挑戦を始めました。
平林社長
「今はホテルの運営をしております」
旅行代理店でホテルを手配する側だった人が、今度は提供する側に転身しました。
ホテルの名前は「MONday」その意味は「門」
平林社長の経営する(株)JHATは、「Hotel MONday」という名前で都内2か所に13階建てのホテルを運営しています。
ホームページでは「この門をくぐれば、そこに日本がある」というメッセージに続いて富士山、古都の町並みと舞妓さん、そして東京タワーとビル群の夜景で日本を紹介しています。
メッセージと画像から、外国人客を強く意識していることがうかがえます。
新しいホテル像をめざし、コンセプトは2つ
そのコンセプトは2つ
- コンセプト1.ありそうでなかったホテル
- コンセプト2.暮らすように過ごす「アパルトホテル」
いわゆるホテル部門と、新展望の「アパルトホテル」(詳細後述)の2本柱になっています。
まずホテル部門でも、今までありそうでなかった新しいホテルを目指しています。
コンセプト1.ありそうでなかったホテル~3つの特徴
今までありそうでなかった新しいホテルには、つぎの3つの特徴があります。
ありそうでなかったホテル~3つの特徴
- 家族連れも泊まれるゆったり感がウリ
- リーズナブル
- それでいて、おしゃれ
1.家族連れも泊まれるゆったり感がウリ
平林社長は、まず徹底して広さを追求しました。
そのために機能的な収納スペースを作り、またベッドを他のホテルより小さくするなどして部屋を広く感じさせるなどいくつも工夫があり、ここはHISでの経験が生きているようです。
番組ではホテルの一室が紹介されています。
スタッフ
「広い!」
平林社長
「ベッドが3台常設されています」
スタッフ
「これで一泊いくらぐらいなんですか?」
平林社長
「1人、だいたい4,000円から5,000円ぐらいです」
2.リーズナブル
基本的には外国人がグループで長期滞在するという前提で、個人より一部屋でのルームチャージの料金設定なので、大人数ならリーズナブルになります。
3.それでいて、おしゃれ
ゆったり感とリーズナブルは両立できますが、そうすると安普請になるのが普通です。
しかしホテルMONdayは上記の2つを実現したうえで、なかかつ作りもおしゃれを維持できています。その秘密は番組で明かされませんでしたが、これこそ社長の手腕だと思います。
ホテルのホームページが端的にここまでの説明を表現していますので引用します。
本当に心地良い寝室
本当に心地よい寝室とは、どうあるべきか。
華美である必要はないけれど、質素だったらつまらない。
使い勝手は欲しいけれど、ちょっとした洒落感も譲れない。
そんなことを慮るうちに見つけた、ミニマムなのに、心が浮く寝室。
拘り抜いたベッド、あります。
今晩も、いい夢を見られますように。
コンセプト2.暮らすように過ごす「アパルトホテル」
HISの社長時代に、平林さんが日本のホテルへ感じていた不満があり、
平林社長
「外国人旅行者は、ご家族とか友達同士といった複数の人数で来られるのですが、そういった方々にうまくフィットするホテルが少ないんですね、実は」
こうした不満への回答が、上記したありそうでなかったホテルというわけです。
そしてもう一つ、外国人観光客では滞在日数の問題もあります。たとえば欧米からの旅行者なら平均宿泊日数は10日以上と長期になることが多く、こちらに対し社長が出した答えが「アパルトホテル」です。
こちらはキッチン付きで長期滞在も可能。部屋の作りはホテルというよりマンションに近く、家具家電も完備されています。
セキュリティーも十分ですし、ホテル内には託児所もあるので、長期滞在にも不自由がないよう工夫されています。
2020年の6月~7月に都内で6カ所相次いで開業予定で、料金は大人6名まで1室1泊37,000円程度(ホームページを参考)の設定になっています。
こちらもホームページから説明文を引用します。
滞在するのではなく「暮らす」アパルトホテル
作りたかったのは滞在するのではなく「暮らす」アパルトホテル。
hotel MONday Apartmentでは、長期間宿泊される旅行者に自宅のようにくつろいでいただける空間を提供いたします。アパルトホテルでの暮らしが、旅の大切な思い出の一つとなりますように。
(株)JHATのビジネスプランについて
広さと価格とおしゃれ、相反する3つを実現しようとする工夫と熱意が感じられます。やはり大手旅行代理店のトップだった経験が活かされていると思いました。
旅行予約サイトの口コミを見ましたが、概ね良い評判が多く、不満や苦情も個人差はあっても、他のホテルへの口コミと同じでこのホテルだけの特別な問題はないようです。
とはいえ、利用する人の多くは価格重視のようなので「安かろう悪かろう」と思われないようサービスの維持向上が必要でしょう。
新展望のアパルトホテル、個人的には一度利用してみたいと魅力を感じました。