目次
個人事業主へ融資する公的金融機関
株式会社などの法人と違って、個人事業についての融資はかなり限られてきます。個人事業主によって一番利用されているのは、日本政策金融公庫からの融資でしょう。
日本政策金融公庫は、政府系の公的金融機関であり、大企業に比べて資金調達が限られる中小企業に対して長期の資金を融資するなど、民間の金融機関が対応出来ていない部分を補完する事業を行っています。
融資の種類についても、新規の開業資金の融資から、資金繰りに困難をきたしている事業主への融資、第三者保証人などを不要とする融資まで、実に多彩です。
まず、新規の開業資金の融資では、新たに事業を始める人だけでなく、事業開始後5年ほどの人にまで広げて融資を行っています。
現在勤めている企業に継続して6年以上勤めている人や、雇用拡大を伴う事業を始める人、技術やサービスなどに工夫を加えて多様な需要に対応する事業を始める人などを対象としていて、開業資金、運転資金、設備資金などの融資が行われています。
また、経営環境が急激に悪化する中で、資金繰りに困っている人を対象とする融資も行っていて、こちらは運転資金についての融資となっています。
個人事業主や小企業の人に向けての融資では、第三者の人の保証や不動産、有価証券などの担保が不要な融資というものに人気があります。
融資の条件としては、税務申告を2期以上行っていること、原則として所得税を完納していることというのが設定されていて、運転資金や設備資金などに利用されています。
個人事業主へ融資する地方自治体
個人事業主を対象とした融資には、都道府県や市区町村などの地方自治体が行う公的資金を貸し出す制度というものもあります。
これは制度融資と呼ばれるもので、自治体と銀行などの金融機関、信用保証協会が協力して行うものです。
金利が低くて借りやすいということから人気も高く、これから事業を始めるという人には利用しやすい融資となっています。ただし、審査に若干時間がかかるという点が欠点として指摘されています。
融資の内容が各自治体で異なっていることから、融資の種類や融資額、返済期間、融資条件などを、きちんと確認してから申し込むようにしなければなりません。
制度融資の仕組みについて、東京都の例でいえば、東京都がまず民間の金融機関に資金を預託して、信用保証協会が個人事業主の信用を保証するという形をとり、民間の金融機関から融資が行われるということになっています。
保証人や担保を用意する必要が無いので手軽に利用でき、創業融資については、最大融資額2500万円と多額なので、これから個人事業を始めるという人にとっては、またとない融資といえます。
ただし、保証人や担保が必要ない代わりに、信用を保証する信用保証協会に対して、信用保証料を支払う義務があるので注意しなければなりません。
融資の返済期間としては、運転資金が7年以内、設備資金が10年以内とされています。
他に、常時使用する従業員の数が20人以下の中小企業については、小口資金融資というものもあり、融資額は1250万円以内となっています。
返済期間については、運転資金が7年以内、設備資金が10年以内となっています。
個人事業主へ融資する民間金融機関
事業における資金調達というと、まず銀行からの資金調達を考えることが多いようですが、個人事業の場合は、大手銀行や都市銀行、地方銀行などの銀行系の融資を受けるのは難しいとされています。
特に、個人事業の開業資金の調達などが目的である時は、担保力もまだないため、ほとんど不可能に近いものです。
ただし、民間金融機関のなかでも、信用金庫や信用組合などは窓口をかなり広くしているため、個人事業でも融資が可能になることが多いようです。
信用組合や信用組合は、地域密着型の営業スタイルであり、特定の地域内で営業している個人事業主や中小企業を融資の対象としていることを最初からうたっています。
信用組合は、比較的広い地域で営業しているのに対し、信用組合は狭い地域、業域、職域で営業しているといえます。
そこで、信用金庫の場合は、原則的に出資をしている会員のみが融資を受けることが出来、信用組合の場合は、出資しているのが組合員となるので、融資を受ける時も、預け入れの時も組合員に限ることになります。
つまり、この両者で融資を受けたいとするならば、まずその会員や組合員になる必要があるということです。
そこで、大切になるのがこれらの金融機関に出資して信頼関係を築いていくということです。会員・組合員になるためには、1万円程度の出資金を支払う必要があります。
その上で、普通預金の口座を開設して、給料など必要経費の入金や公共料金の引き落しに利用するようにすると良いようです。
その後、定期積立などで計画的に積み立てるようにして信用度を高め、融資の窓口にも顔を覚えてもらうようにするという手順を踏む人が多いようです。
そして、事業を始める際に、事業計画書を持参して相談するという流れでいけば、融資の可能性が広がります。
個人事業主に対する助成金制度
個人事業を始める時の資金計画の中に取り入れたいのが助成金制度です。
助成金制度は、厚生労働省や経済産業省、ハローワーク、地方自治体などが取り扱っている制度で、事業主を助成することを目的とした返済の義務のない支援金を支給するものです。
助成金は、雇用対策や地域活性化のために事業を育てるという目的で創設されたものです。
その為、助成内容によっては利益に応じる形で返済を求められることもあります。しかし、原則として、審査にさえ通れば返済の義務は生じません。つまり、タダで貰うことが出来るわけです。
助成金の財源となっているのは、会社が国に対して支払っている雇用保険料です。
だから、雇用保険に加入している人は、もれなく助成金を受ける権利を有しています。逆に、雇用保険に加入していない人は、助成金の受給対象とはならないので注意が必要です。
個人事業でも、起業時にはお金がかかることが多く、この助成金を受けることで、その後、事業を軌道に乗せることができたという人は少なくありません。
助成金制度はあまり知られていませんが、複雑な手続きを面倒がらずに行えば、賢い資金調達ができるのです。
助成金制度の利用で注意すべきことは、それぞれ窓口となっている機関が異なっていて、手続きも複雑で理解しにくいことです。
また、要件を満たしていても、申請の時期などが設けてあったりするので、その時期を見逃してしまわないようにしなければなりません。
この煩雑な手続きについては、社会保険労務士や中小企業診断士、行政書士などの専門家に依頼して確実に進めるようにすると良いでしょう。
個人事業主に対する助成金の内容
個人事業主が受けることの出来る助成金は、大きく分けて研究開発型の助成金と雇用における助成金とに分けることができます。意外と知らない人が多いのですが、利用すればとても有利に事業を進めることができます。
まず、研究開発型の助成金は、経済産業省が中心となって募集しているものです。ただ、書類と面接の2つの審査を通らなければならないという条件があるので、準備を怠らないようにしなければなりません。
受給額も500万円から5000万円までと、かなり高額なので競争率が高く、簡単にはもらえないので、そのことは覚悟しておかなければなりません。
一方、雇用に関する助成金は、従業員の職業の安定、失業への対策、雇用状態の改正といったものを図っていくのが目的となっているため、個人事業主ならば、この助成金はほとんどの場合、受給することが出来るようです。受給するための条件に合っていれば、ほぼ確実にもらうことが出来るといっても良いでしょう。
ただし、社会の変動とともに助成金の種類は変わっていくので、助成金の内容や受給する条件には注意が必要です。雇用に関する助成金の受給希望者は、最新情報を必ずチェックするようにしましょう。
まず、受給資格者創業支援助成金は、雇用保険の受給資格者が自分で事業を始める時、または創業後1年以内に雇用保険の適用事業の経営者になった場合に支給されます。
設立してから3カ月以上経営していることがその条件となっています。
助成の内容として、支給の上限を150万円とし、創業に要した費用の一部を助成するものとすることが決められています。
また、地域創業助成金というものもあり、これは、地域に貢献しようとしている法人や個人事業を開業し、労働者を2人以上雇った場合に支給されるものです。
労働者に関しては、再就職を希望する65歳以下の継続労働者でも構わないとされています。条件としては、開業してから半年以内に地方再生事業計画書を差し出し、審査に通ることとされています。